ルネッサンス期の著名な画家ピーテル・ブリューゲル(父)は、名作『ネーデルラントの諺』で、農民の暮らしを描きました。この傑作を少し離れたところから眺めれば、農民の日常を見事にとらえた美しい作品だとしか思えないでしょう。でも、目を近づけて良く観察してください。あちこちにいくつものお尻が描かれています。詳しいところまで見ようとした人が、思わずぎょっとして、クスッと笑ったり呆れかえったりする作品なのです。ライターやデザイナー、ゲームなどの開発者、写真家、もしくはまったく異なる業種の人でもかまいません、どんな分野であれ、1つの仕事をある程度続けていれば、ブリューゲルが使ったような、見る人や聴く人の関心を引き留めておくための「秘策」の存在に気づき始めます。それは、ちょっとしたワザやパターン、微妙な違いにすぎません。それまでは気づいたこともなければ、深く考えたこともなかったけれど、いったんわかったら、もう無視することはできないものです。筆者は、ライターとして仕事をしてきたこの5年間で、自分なりの秘密兵器を少しずつ蓄えてきました。それらはとても些細なもので、ほとんど気づかれませんが、筆者のスタイルを高め、クライアントを呼び込み、読者を引きつけてくれます。その中でも最大の威力を誇る秘密兵器は何だと思いますか。ポイントは、「何を書くか」ではなく「どのように書くか」です。